B型肝炎訴訟の主要な目的

被害者の個別救済

B型肝炎訴訟の主要な目的の一つは、感染者一人ひとりの被害者の個別救済です。集団予防接種により感染した可能性がある多くの被害者が存在しています。これらの被害者には、肝がんや肝硬変といった深刻な健康問題を抱えている方も多く、早急な医療支援と補償が必要とされています。平成23年に基本合意が成立し、平成24年には特定B型肝炎ウイルス感染者給付金が設立されました。この給付金により、被害者の治療費や生活支援が一定の範囲でカバーされるようになりました。また、給付金を受け取るためには、国を相手とする訴訟を提起し、和解をする必要があります。このプロセスを通じて、個別の被害者が適切な補償を受けることが可能になります。

ウイルス性肝炎患者全体の治療体制確立

B型肝炎訴訟のもう一つの重要な目的は、ウイルス性肝炎患者全体の治療体制を確立することです。訴訟を通じて、国の責任が認められたことで、ウイルス性肝炎患者の存在とその治療の重要性が広く認識されるようになりました。平成28年には特措法が改正され、給付金の請求期限が5年延長されました。このような法的措置により、治療体制が改善され、より多くの患者が適切な医療を受けることができるようになりました。また、訴訟によって得られた知見や経験は、感染拡大防止策や治療法の改善のために活用されています。これにより、B型肝炎のみならず、他のウイルス性肝炎患者に対する治療体制も強化されています。

B型肝炎訴訟の成果と課題

救済制度の現状と問題点

B型肝炎訴訟の成果として、平成24年に「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金」が設立されたことが挙げられます。この給付金により、死亡・肝がん・肝硬変(重度)の場合は最大3600万円、肝硬変(軽度)の場合は最大2500万円、慢性肝炎の場合は最大1250万円、無症候性キャリアの場合は50万円+定期検査費用が支給されます。

 しかし、この救済制度にはいくつかの問題点も存在します。まず、給付金を受け取るためには国を相手取る訴訟を提起し、和解をする必要があります。この手続きには証拠書類の収集、訴状作成、提訴、和解期日の設定、和解成立、そして給付金請求訴訟の手引きの順に進むなど、多くのステップを踏まなければならず、被害者にとっては負担が大きいです。

 さらに、平成28年に特措法が改正され、給付金の請求期限が5年延長されましたが、依然として時間や書類の制約が被害者にとって障害となることがあります。被害者の多くが高齢であることを考慮すると、迅速な対応が求められています。